血尿の原因は、良性疾患(結石、炎症など)から悪性疾患(膀胱がんなど)までさまざまです。検診などで尿潜血を指摘されて精密検査を受けたことがない方も受診をおすすめします。
顕微鏡的血尿を指摘された方の約20%、肉眼ではっきりわかる血尿を認めた方の50%以上に、悪性腫瘍(がん)を含む、治療、経過観察を要する疾患が見つかるといわれます。検診で「尿潜血陽性」を指摘された方も、初めて指摘を受けた方、検査を受けたことのない方は受診をお勧めします。
・40歳以上の男性
・喫煙歴あり
・有害物質の暴露歴
・排尿時刺激症状のある方
・尿路感染のある方
・鎮痛剤を多用する方
は、尿路のガンの高リスク群といわれ、要注意です。
また、蛋白尿を伴っている場合、腎臓の糸球体からの出血が疑われる場合にも精査が必要です。
初診時には、まず腹部超音波検査、尿細胞診(おしっこにがん細胞が含まれているかを検査します)などを行います。
また、学校検診で血尿を指摘された小児例では、約半数は自然消失するとも言われますが、蛋白尿の程度や家族歴によっては、精査が必要になる場合もあります。初診時に苦痛を伴う検査は行いませんので、まずはご相談ください。
40〜50歳を過ぎると少しずつ感じられるかもしれません。夜おしっこに起きるようになった、出にくくなったと感じれば、一度ご相談ください。
前立腺とは、膀胱の下にある精液の液を作る臓器です。主に40歳以降にその肥大により、尿道が圧迫され、おしっこが近い、出にくいなどの症状が出てきます。60歳以降では約半数の人が夜間の頻尿やおしっこの勢いの低下など、何らかの症状を感じられます。
「年のせいだから」と、放っておかれることも多いのですが、肥大が進み、初期(膀胱刺激期;(特に夜間)おしっこが近い、出にくい、トイレに間に合いにくい)から中期(残尿発生器期)にはいきまないとおしっこが出ない、昼間もおしっこが近いという症状になり、風邪薬を飲んだ後や飲酒後に突然おしっこが出なくなる(尿閉といいます)、といったことも起こります。
さらに後期(慢性尿閉塞期)には膀胱の筋力そのものが低下する、尿意がわかりにくい、尿がだらだら漏れるなどが起こり、この時期になればあわてて手術を受けても、なかなかおしっこはうまく出ないものです。初期から適切に診断、治療を開始すべきです。
尿検査、腹部超音波検査、また、前立腺癌と見分けるために腫瘍マーカー(PSA)測定(採血してしらべます)、MRIなどを行うことがあります。
まずはお薬から治療されますが、お薬が無効であったり、尿閉を繰り返す場合は、手術療法をお勧めします。
手術療法にも、一般によく行われる「経尿道的前立腺切除術」から、最近ではレーザーを用いた方法(これも数種類の方法があります)、「内視鏡的剥離術」などいくつかの方法があります。
男性だけにあるのが前立腺がんです。早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。
PSAといわれる前立腺がんの腫瘍マーカーの重要性が認められ、前立腺がんは急増する傾向にあります。つまり、そのPSAを採血して調べることで、前立腺がんが早期に見つかりやすくなったということです。
ただし、PSAは前立腺の肥大の強い方、前立腺に炎症のある方、激しい運動後や射精後にも上昇し、平均値より高いからといってがんと限られるものではありません。また、平均値そのものも、年齢的な要素も含まれます。検診などでPSA高値を指摘された場合、尿検査や超音波検査、MRIなども参考にします。、
診断には前立腺の細胞をとって顕微鏡でがんが混じっていないか確かめる検査(生検)が必要になります。PSA4〜10程度で20〜30%、それ以上では50%以上の方にがんが検出されます。
生検で前立腺がんが確認されれば、CTなどで転移の有無を確認し、病気の広がりにあわせ、治療方針を検討します。
女性に多く見られる泌尿器科疾患としては(a)膀胱炎(b)過活動膀胱(c)腹圧性尿失禁
などがあります。
(a) 膀胱炎
女性には非常に良く見られる疾患です。尿検査で診断されます。お仕事中に水分を控えたりすると起こりやすいものですが、症状から「膀胱炎だろう」ということで、尿検査もなく、抗菌剤だけ服用するケースも多いようです。繰り返す場合、尿路結石などの疾患が原因になっている場合もありますので、泌尿器科への受診をお勧めします。
(b)
過活動膀胱
あまりおしっこがたまっていないのに尿意を感じる、間に合わずに漏れそうになる、などの症状があります。40歳以上の方の約半数にみられるともいわれますが、症状を詳しくうかがうこと、尿検査、腹部超音波で診断されます。膀胱の刺激を抑えるお薬や、漢方薬などが良く効きます。干渉低周波治療も行うことがあります。
(c)
腹圧性尿失禁
実はめずらしくない症状です。40歳以上の女性の3〜5人に1人みられる、といいます。出産や加齢によることが多いのですが、症状をうかがい、やはり尿検査、腹部超音波とともに、ご自宅でできる尿漏れの重症度判定テストなどで診断します。軽度のものでは括約筋を鍛える体操(骨盤底筋体操)や、干渉低周波による治療が効果的です。内服薬(抗コリン剤、抗うつ剤、漢方薬など)なども併用しますが、重症の場合は手術療法もお勧めします。
尿管にあるものが尿管結石です。現在はおなかを切る手術をしないで治療ができるようになりました。
腎臓でできた結石がおしっことともにぼうこうに向かって移動すると、おしっこの通り道(尿管)につまって、腰、わき腹、下腹部に強い痛みを起こし、場合によっては吐き気、頻尿の原因になったりします。また、尿路感染の原因にもなりやすく、腎盂腎炎を併発することもあります。
治療は、結石の位置と大きさ、併発症状により選択されます。
尿検査、腹部超音波検査、レントゲン(場合によりCTも)で診断します。
5mm以下の小さなものは主に自然排石を期待し、10mm以上のものは体の外から衝撃波をあてて石を壊したり、大きいものや壊れにくい石は内視鏡で砕いてとる方法もあります。5〜10mmの石は、動き具合や、合併症なども含めて判断するのが良いでしょう。
ただし、尿路結石は大変再発しやすく、40-50%のかたは再発するといわれます。一度治療されても、定期的な検査をお勧めします。また再発予防のためには
・水分摂取を心がける
・シュウ酸や動物性タンパクの取りすぎに注意しましょう
・シュウ酸はカルシウムと一緒に食べたほうがからだに取り込まれにくく、結石予防となります
シュウ酸はほうれんそう、たけのこ、チョコレート、紅茶に多く含まれますが、ほうれんそうはちりめんじゃことともに、紅茶、チョコレートはミルクととるなどの工夫をされてはいかがでしょうか。
尿道に細菌が進入し、感染を起こす病気やSTD(性感染症)の場合などがあります。
(a)腎盂腎炎
頻尿とともに、発熱、腰痛が見られます。重症になれば入院治療を要することも。結石、腫瘍などの合併症であることも多く、早めの受診をお願いします。
(b)膀胱炎
通常抗菌剤により数日で治癒します。ただし、再発を繰り返す方、男性で発症した方は、基礎疾患(もとになる病気)があることが多いので、要注意です。まずは腹部超音波検査、レントゲン検査などを行います。
(c)前立腺炎
高熱を伴い、排尿時の痛みや出にくさを症状とする急性前立腺炎、発熱はないものの軽い痛みや頻尿症状があり、尿によごれのある慢性細菌性前立腺炎は、抗菌剤による治療を要します。急性で、重症の場合は入院治療をお勧めする場合もあります。
下腹部から尿道、場合によりわき腹にわたる不快感、軽い痛みを伴う慢性非細菌性前立腺炎は、飲酒や睡眠不足、疲労によるうっ血の影響とも言われますが、、更年期障害症状とも併せ、少し良くなったり、また悪くなったりと繰り返されることがあります。
(d)精巣上体炎
精巣(睾丸)の裏側にある精巣上体は、精巣から尿道への精子の通り道ですが、そこに感染を起こすと、赤くはれ上がり、高熱の元になります。抗菌剤の点滴や内服、その部を冷やして安静にすることが必要です。重症の場合、やはり入院治療を要します。
(e)亀頭包皮炎
小児に多く、包皮が赤く腫れ、おしっこのときに痛がります。抗菌剤を含んだステロイドクリームの塗布(場合により内服薬併用)で治ります。
(f)尿道炎
男性ではいわゆる「性行為感染症」です。淋菌、クラミジアが代表的ですが、いずれも最近は抗菌剤にききにくい菌が多く、特にクラミジアは女性に感染すると激しい腹痛や、不妊の原因にもなり、男性でも前立腺炎、精巣上体炎の原因となるため、きっちりと(できればパートナーとともに)治療することが必要です。痛みを伴う検査は不要で、尿検査で診断されます。
また、男性の亀頭や包皮にカリフラワー状のイボができる「尖圭コンジローマ」は局所麻酔をしてイボを処置します。
男性更年期障害は、年齢とともに男性ホルモンが徐々に低下することによって、様々な症状が現れる疾患です。これまでは女性の更年期障害が社会的のも多く議論されてきましたが、近年、男性にも女性と同じように更年期障害のあることが明らかとなり、注目されています。発症には、この年齢の男性に襲い掛かるさまざまなストレスも大きく関与していると考えられています。個人によって、男性ホルモンの値に個体差があり、また、同じ男性ホルモンの値でも症状の出る人も出ない人もあります。診断は、自覚症状を正しく把握すること、男性ホルモン値を測定すること、他の疾患を除外することによって行われます。
不妊原因は、男性側である場合も約50%といわれます。不妊期間2年以上の場合、精液検査をお勧めします。
不妊検査といえばまず女性からなどとも思われがちですが、約50%は男性側にも原因があるといわれています。不妊期間2年以上で検査ご希望の場合、精液検査も受けられることをお勧めします。初診時に検査ご希望の場合は、まずお電話でご相談ください。